ミネラルたっぷりの魚醤「ナンプラー」は、アジア料理を作るときによく登場します。でも、いざレシピ通りに作ろうと思ったときに、家にあったかな…と戸棚を見て悩んだ経験、ありませんか?
実際、日本の家庭では常備されていることは少なく、スーパーでも売り場が限られているため、見つけづらかったり、あの独特の香りに戸惑って手を出せずにいる方も意外と多いようです。
そんなとき、「代わりに何を使えばいいんだろう?」「醤油で代用しても大丈夫かな?」と迷ってしまうこと、ありますよね。
この記事では、そんなモヤモヤを丁寧にほぐしていきます。ナンプラーの風味の特徴を押さえたうえで、代用品として使える調味料を目的別に紹介しながら、味の再現方法やちょっとした工夫、さらには簡単に試せるナンプラー風だれレシピまで幅広くご紹介します。手元にあるもので近い味を出すコツがわかると、アジア料理のハードルもぐっと下がりますよ。
ナンプラーの風味とは?代用する前に知っておきたい特徴
代用を考える前に、そもそもナンプラーってどんな味?というところを押さえておくことが大切です。意外と、正確に説明しようとすると難しいんですよね。
ナンプラーは、主にカタクチイワシなどの小魚を塩漬けにして長期間熟成・発酵させて作られる、タイを代表する魚醤のひとつです。塩味がしっかり効いていて、ほんのりとした魚のうまみと、発酵によるコクや香りが特徴です。クセがあると言われることもありますが、炒め物やスープに入れると、その風味が一気に深みとなって料理を引き立ててくれます。
そのため、ナンプラーの代用品を探すときは、塩味だけでなく、魚由来のうまみと発酵による独特の風味をどう再現するかがポイントになってきます。単にしょっぱい調味料を足すだけでは、物足りなく感じてしまうかもしれません。
【まず試したい】ナンプラーの代用に向く定番調味料
では、ナンプラーが手に入らないとき、どんな調味料で代用できるのでしょうか。ここでは、家庭にあることが多い調味料を中心に、代用の候補をいくつかご紹介していきます。
醤油(しょうゆ)
もっとも手軽で身近な代用品としてまず挙げられるのが「醤油」です。ナンプラーと同じく発酵調味料で、塩気とコクがあり、和食から洋食まで幅広く使える万能選手です。
ただし、風味のベクトルが少し異なるため、魚介のうまみが欲しい場合には「ほんの少しのかつお節や煮干し粉」を加えるとグッと近づきます。炒め物などで使う場合は、香ばしさがプラスされるため、仕上がりのイメージに合わせて調整してみてくださいね。
白だし(またはだし醤油)
白だしやだし醤油も、ナンプラーの代わりとして使いやすい選択肢のひとつです。昆布やかつおの出汁が効いており、ナンプラーのうまみに近い要素をもっています。炒め物やスープ系のレシピでは、まろやかさと奥行きが出しやすいです。
ただし、塩分濃度が製品によって異なるため、味見しながら量を加減することを忘れずに。色が薄いため、料理の見た目をあまり変えたくないときにも向いています。
いわしの魚醤(しょっつる・いしる)
もし家に「しょっつる」や「いしる」といった日本産の魚醤がある場合は、ナンプラーの代用としてかなり相性が良いです。これらはナンプラーと製法が近く、原料となる魚や発酵の風味もよく似ています。
東南アジア料理にそのまま使っても違和感が出にくく、炒め物やスープの香りづけとしても非常に重宝します。塩気が強めなので、入れすぎないように注意しながら少量ずつ使うのがポイントです。
味の再現だけじゃない?代用時に気をつけたいこと
ナンプラーの代用品を使うときには、いくつか気をつけたいポイントもあります。というのも、ナンプラー特有の香りや後味は、料理全体の印象を大きく左右することがあるからです。
たとえば、魚醤特有の香りを消したくて醤油に切り替えると、どこかあっさりしすぎてしまうことも。一方で、白だしなどはまろやかで優しい味わいになりますが、パンチが足りないと感じる場合もあります。
代用する際には、「そのレシピでナンプラーが担っていた役割は何か?」を考えてみると選びやすくなります。風味のアクセントとして使っていたのか、ベースの塩味として加えていたのか、それによって使う調味料や分量のバランスも変わってくるんです。
レシピ別・ナンプラーの代用品と使い分けのコツ
「炒め物」「スープ」「サラダドレッシング」など、ナンプラーが登場する料理のタイプによって、代用品の選び方にも少し工夫が必要です。それぞれのケースに合わせて、より自然に仕上がる代用方法をご紹介します。
アジア風炒め物(ガパオライス・パッタイなど)
ナンプラーの香ばしさやコクが味の決め手になることが多いため、風味にインパクトのある「魚醤」や、かつお節+醤油の組み合わせがおすすめです。ナンプラーの香りが苦手な方でも、醤油+オイスターソース少量で似た雰囲気が出せることもあります。
仕上げにレモンやライムを絞れば、酸味とのバランスで違和感が少なくなりますよ。
スープ系(フォー・トムヤムクンなど)
出汁のうまみと塩気が重要になるため、白だしやだし醤油が使いやすいです。特に、魚醤をほんの少し加えると一気に東南アジアらしい風味になります。
もし魚醤がなければ、「ナンプラーの役割=うまみ成分+塩分」だと捉えて、鶏がらスープ+塩+ごく少量の醤油でも調整可能です。
サラダや生春巻きのたれ
ドレッシングとしてナンプラーが入っている場合は、にんにく・レモン・砂糖・酢・醤油を合わせると比較的近い風味になります。ナンプラーの風味が引き立つレシピでは「味の骨格」が重要なので、代用時は香味野菜や酸味でバランスを取ると、物足りなさが軽減されます。
ナンプラー風の味を再現する簡単だれレシピ
ナンプラーを使う予定だった料理に、「どの調味料をどれくらい入れれば近づくのか」と迷うこと、ありますよね。そこで、手持ちの調味料だけで“それっぽさ”が出せる、簡単な配合例をいくつかご紹介します。どれも分量は目安なので、仕上がりを見ながら微調整してみてください。
●炒め物向け:香ばしさを出したいとき
- 醤油:小さじ1
- オイスターソース:小さじ1/2
- すりおろしにんにく:少々
- あれば:魚粉やアンチョビペーストをほんのひとつまみ
ナンプラー特有のコクと発酵感を出したいときに便利な組み合わせです。火を通す料理に向いており、ガパオライスや焼きビーフンなどにも応用できます。
●スープ系:だし感と塩味の代用
- 白だし:大さじ1
- 薄口醤油:小さじ1/2
- レモン汁:少々(酸味の輪郭を足す)
東南アジア風のスープでよく感じる、塩気とうまみと酸味のバランスを意識した配合です。鶏がらスープの素を少し加えると、深みがさらに出ておすすめです。
●ドレッシング風:ナンプラーなしのたれに
- 醤油:大さじ1
- レモン汁:大さじ1
- 砂糖:小さじ1/2
- 酢:小さじ1
- ごま油:少々
- にんにく(すりおろし or チューブ):ごく少量
生春巻きのたれやアジア風サラダのドレッシングとして使いやすい味つけです。ナンプラーの香りが苦手な方にも好まれやすく、クセを抑えつつも雰囲気のある仕上がりになりますよ。
香りも再現したいなら?ひと工夫で近づける裏技
ナンプラーの独特な風味は、単体の調味料で代用するには限界があると感じる方もいるかもしれません。そんなときは、複数の調味料を組み合わせて再現するという方法もあります。
たとえば、「醤油+オイスターソース+すりおろしにんにく」をほんの少量ずつ混ぜることで、コクと風味を引き出しやすくなります。さらに、隠し味としてごく少量のアンチョビペーストや魚粉を加えると、発酵系のニュアンスが加わって一層ナンプラーに近づきます。
ただし、香りが強くなりすぎる場合もあるので、最初はごく少量ずつ試してみてくださいね。
ナンプラーを入れ忘れたときのリカバリー方法は?
料理を作っている途中で「ナンプラー入れ忘れた!」と気づいたとき、すでに火を止めていたり、食卓に並べる寸前だったりすると焦りますよね。
でも、心配はいりません。実は、ナンプラーの役割は仕上げ段階で入れても意外と十分に発揮されます。たとえば、炒め物やスープなら、火を止めてから少量加えるだけでも香りがふわっと立ち、味が引き締まります。
どうしてもナンプラーが使えないときは、味に深みを持たせるために、ほんのひとつまみの塩や、鶏がらスープの素、干しエビの粉末、レモン汁などを組み合わせてみてください。
大切なのは、ただの塩気だけでなく、香りやうまみの要素も意識して整えることです。
ナンプラーの代用品は、正解がひとつじゃない
ここまでご紹介してきたように、ナンプラーの代用にはいくつか選択肢がありますが、絶対の正解というものはありません。
なぜなら、「何を作るか」「どんな味に仕上げたいか」「誰が食べるか」によって、ベストな代用方法は変わってくるからです。
たとえば、ナンプラーが苦手な人がいるなら香りを控えめに、ナンプラーの風味が大好きな人なら、ちょっとした工夫でコクを強めに出してあげる…。そんなふうに、料理に寄り添うような使い方ができれば、それこそが一番の代用成功なのかもしれません。
まとめ
ナンプラーが手元になくても、醤油や白だしをはじめとした身近な調味料で、似たような風味を再現することは十分可能です。
大切なのは、ナンプラーが料理の中でどんな役割を持っているかを見極めたうえで、代用調味料の組み合わせや入れるタイミングにちょっと気を配ること。
無理に再現しようとしなくても、近い風味やコクを補うことで、おいしさは十分に引き出せます。身近な調味料で工夫すれば、アジア料理のハードルもグッと下がりますよ。
「ナンプラーがないから作れない」とあきらめる前に、一度手元の調味料を見渡してみてください。意外と、代わりになるものはすぐそばにあるかもしれませんね。