ふと文章を書くときに、「成績をおさめる」ってどっちの漢字だっけ?と戸惑うこと、意外と多いかもしれませんね。
「修める」も「収める」も読みは“おさめる”で、どちらも目にしたことがあるだけに、頭の中で一瞬止まってしまうのも無理はありません。
とくにビジネス文書や学校関係のレポートなど、漢字の誤りがそのまま印象につながる場面では、できれば自信を持って正しい方を選びたいところです。
今回の記事では、「成績をおさめる」には「修める」と「収める」のどちらの漢字を使えばよいのか、その違いや理由をじっくり解説していきます。
「成績をおさめる」の漢字は「収める」が正解
まず結論からお伝えすると、「成績をおさめる」の正しい漢字は「収める」です。
なぜ「修める」ではなく「収める」が適しているのか。
それは「成績」という言葉が「努力の結果として得られた成果」を表す言葉だからです。
「収める」には、「成果・利益などを得る」「ある結果に到達する」という意味合いがあります。
たとえば「利益を収める」「勝利を収める」など、何かしらの具体的な結果を得たときに使われます。
一方の「修める」は、「学問・技術・行動などを身につける」というニュアンス。
「学問を修める」「礼儀を修める」といったように、知識や能力を習得することを指すんですね。
つまり──
✔「成績」という結果を得た → → 「収める」が適切
✔「学問」や「技術」そのものを習得する → → 「修める」が適切
このように、使い分けの基準は「得たものが結果か習得内容か」で判断すると、すっきり整理できます。
たしかに、「学問を修めた結果として、成績を収めた」というように、文脈によっては両方出てくることもあるかもしれません。
でも、「成績をおさめる」単体の表現においては、「収める」一択で間違いありません。
「収める」の意味とは?
では、「収める」という言葉の本来の意味はどんなものなのでしょうか。
「収める」はもともと、「集めて中に入れる」「しまいこむ」という意味が語源です。
そこから派生して、「成果を得て、手に入れる」といったニュアンスが生まれました。
たとえば、次のような表現が一般的です。
- 「売上を収める」
- 「勝利を収める」
- 「利益を収める」
- 「成果を収める」
- 「良い成績を収める」
これらに共通しているのは、努力の末に得られた結果や成果を表しているという点。
「収める」は、どちらかというとゴールの状態にフォーカスが当たっている漢字なんですね。
また、「収」の字は「収穫」「回収」などにも見られるように、「手元に集めて保持する」という意味合いも強く持っています。
成績というのも、「学習の積み重ねによって得られた結果」という位置づけなので、「収める」とつながりがあるのも納得ではないでしょうか。
「修める」の意味は、習得や完成に重きがある
いっぽうで「修める」はどうでしょうか。
こちらは、「学んで身につける」「技術を磨く」「行いを正す」といった内面の成熟や能力の習得を意味する言葉です。
たとえば、
- 「学問を修める」
- 「武道を修める」
- 「道徳を修める」
- 「資格課程を修める」
といった表現が一般的です。
「修」の字には、「ととのえる」「整える」という意味があり、自分の中の知識や行動を“しっかりと形にする”ような場面で使われます。
つまり「修める」は、努力や学習の過程や中身に焦点があると言えるんですね。
この点が、「成果・結果」を意味する「収める」との大きな違いになります。
たとえば、「国家資格の課程を修めた結果、優秀な成績を収めた」というように、両者がセットで使われる場面では、
前半は「修める」、後半は「収める」と、それぞれの意味を考慮した正しい漢字の選び分けが求められます。
「収」と「修」が混同されやすい他の“おさめる”表現にも注意
「成績を収める」と同じように、読みが「おさめる」の表現には、他にも複数の漢字が使われていますよね。
たとえばこんなふうに──
- 税金や会費をおさめる → 納める
- 国や地域をおさめる → 治める
- 習いごとや資格をおさめる → 修める
- 勝利・利益・成果をおさめる → 収める
どれも日常の中でよく目にする言い回しですが、「収める」と「修める」はとくに意味が近いぶん、使い分けがあいまいになりやすいのが現実です。
たとえば「大学をおさめた」と書いたとき、それが「卒業したこと」を指すのか、「学問を修めたこと」なのか、文脈によって受け取り方が変わることもあります。
ただ、逆に言えば──
文の前後をしっかり見れば、自然とふさわしい漢字が浮かぶということでもあります。
ちょっとした意識の違いが、読みやすさや伝わりやすさを大きく左右するんですね。
判断に迷ったときのヒント:「成果」か「習得」かで選ぶ
ここで、「収める」と「修める」の判断に役立つ、シンプルな問いかけを紹介しておきます。
それは、
この「おさめる」は、何かを得た話なのか?
それとも何かを身につけた話なのか?
という視点です。
- 「得た」→ 結果や成果 → 収める
- 「身につけた」→ 学習・習得・技術 → 修める
この2軸を意識してみると、曖昧に見えた表現もずいぶん整理されて見えるはずです。
たとえば、
- 「表彰状を収めた」→ 成果を得た
- 「資格課程を修めた」→ 学びを完了した
- 「目標を収めた」→ 達成した
- 「剣術を修めた」→ 習得した
どれも同じ「おさめる」ですが、何を伝えたいのかで自然と使う漢字が決まってくるのが分かりますね。
ビジネスや教育現場では「印象」に直結することも
「漢字の間違いって、そこまで気にする必要あるの?」と思う方もいるかもしれません。
でも実際のところ、ビジネス文書や学校での提出物など、フォーマルな文章では小さな漢字の違いが評価に直結する場面も少なくありません。
とくに、「修める」と「収める」のように意味が異なる漢字の使い方を間違えてしまうと、
- 「意味を理解していない印象を与える」
- 「文章全体の信頼感が損なわれる」
- 「注意不足・雑な印象を残す」
といった、ちょっともったいない評価になってしまうこともあるんですね。
逆に、文脈に応じて漢字を適切に使い分けられていると、それだけで「言葉を丁寧に扱っている人だな」という印象にもつながります。
文章の内容だけでなく、「伝え方」の精度を高めるうえでも、こうした小さな漢字の使い分けは意外と大切なんですね。
迷ったときは「ひらがな」で逃げるのも選択肢
それでも、どうしても「修める」「収める」で迷ってしまった場合。
そんなときは、無理にどちらかの漢字を使おうとせず、あえて「おさめる」をひらがなで書くという選択肢もあります。
たとえばブログ記事やSNS、メッセージアプリなど、そこまで厳密さを求められない場面では、あえてひらがなで書いたほうがやわらかく、読みやすく感じられることもありますよね。
もちろん、漢字の意味を理解したうえでの“意図的なひらがな”であれば、読み手に違和感を与えることは少ないはずです。
無理にどちらかを使って間違えるより、「迷ったらいったん戻る」という選び方も、言葉に対する誠実さのひとつと言えるかもしれません。
まとめ
「成績をおさめる」の正しい漢字は、「収める」です。
「成績」は学習の過程ではなく成果を示すため、「結果を得る」意味を持つ「収める」が自然。一方で「修める」は、学問や技術を身につけたことに使われます。
どちらも「おさめる」ですが、意味の違いを知って使い分けるだけで、文章の信頼感がぐっと高まります。
迷ったときは、「成果」か「習得」かを見直すことがカギ。もし判断に迷うなら、あえて「ひらがな」で表現するのもひとつの方法です。
小さな違いに気を配れること。それこそが、丁寧な伝え方への第一歩かもしれません。
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