「すばらしいですね!」
打ち合わせで上司に、あるいは友人の作品を見て、心からの気持ちを伝えたはずなのに…。なぜか後から、「なんだか、ありきたりだったかな」「もっと気の利いた言葉はなかっただろうか」と、自分の語彙力に少しだけがっかりしてしまう。
そんな、ちょっとだけもどかしい気持ちになったことはありませんか。
相手を褒めたい、感動を伝えたい、という気持ちは、とても温かくて素敵なものです。でも、その豊かな感情のすべてを、いつも「すばらしい」という便利な言葉の箱に収めてしまうのは、なんだか少しもったいない気もしますよね。
この記事では、あなたの「もっと深く、的確に伝えたい」という優しい気持ちに、そっと寄り添いたいと思います。まずはすぐに使える言い換えの言葉から。そして、それをどんな場面で、どんな気持ちを乗せれば想いが通じるのか、そのヒントを一緒に探していきましょう。
「すばらしい」の言い換え表現は?|一言で伝わる言葉たち
さっそくですが、まずは「すばらしい」の代わりに使える言葉たちに、どんなものがあるのかを一緒に見ていきましょうか。きっと、あなたの気持ちに寄り添ってくれる言葉が見つかるはずです。
ここでは、様々な場面で使いやすい言い換えの言葉を、簡単な解説と共にご紹介します。手帳の隅に書き留めておくだけでも、いざという時に心強い味方になってくれるかもしれませんよ。
<ビジネスや目上の方へ・敬意を伝えたいときに>
- 見事
相手の技術や手腕に、素直に「うまい!」と感じたときに。少しだけ改まった響きが、あなたの敬意を伝えてくれます。「見事な出来栄えですね」なんて言葉が自然に出てくると、素敵ですよね。 - 感服いたしました
「感心して、敬意を抱きました」という、深い尊敬の気持ちを伝える言葉です。相手の知識の深さや仕事ぶりに、心から頭が下がるような思いがしたときに使ってみてはいかがでしょうか。 - 圧巻です
他を圧倒するほどの迫力や、ずば抜けた素晴らしさを目の当たりにしたときに。プレゼンテーションや成果物に対して使うと、その場の空気を支配するほどのインパクトがあったことが伝わります。 - 秀逸(しゅういつ)な
「他よりも抜きん出て優れている」という意味合いで、特にアイデアや着眼点を褒める際にしっくりきます。「秀逸なご提案、ありがとうございます」と伝えることで、知的な賞賛のニュアンスが生まれます。
<友人や親しい相手へ・気持ちをストレートに伝えたいときに>
- 素敵
相手の人柄やセンス、その場の雰囲気など、温かくて優しいものを褒めたいときに。言葉自体が持つ、柔らかい響きがいいですよね。「その考え方、すごく素敵だね」のように使えます。 - 最高
これ以上ない、という気持ちをストレートに表現する言葉です。理屈抜きの感動や喜びを、親しい仲間と分かち合いたい。そんな場面にぴったりです。 - 感動的
心が大きく揺さぶられたときに。音楽や物語、あるいは誰かのスピーチなど、自分の感情が動いたことを素直に伝えたいときに使うと、気持ちが伝わりやすいかもしれません。 - 鳥肌が立った
すごいものを目の当たりにして、思わずゾクッとするような感覚。体が先に反応してしまった、というような、抗えないほどの衝撃や感動を表現してくれます。
いかがでしょうか。
もちろん、これが全てではありませんが、これだけの選択肢があると思うと、少しだけ気持ちが楽になりませんか。大切なのは、これらの言葉をただ暗記することではありません。
次の章では、そもそもなぜ私たちはつい「すばらしい」に頼ってしまうのか、その理由を少しだけ探ってみたいと思います。その上で、これらの言葉をどんなふうに使い分ければ、あなたの気持ちがもっと伝わるようになるのかを、一緒に考えていきましょう。
そもそも、なぜ私たちは「すばらしい」に頼ってしまうのでしょう?
それにしても、どうして私たちはこれほどまでに「すばらしい」という言葉を多用してしまうのでしょうか。
もちろん、この言葉自体が悪いわけでは決してありません。相手を肯定し、賞賛する、とてもポジティブで便利な言葉です。
ただ、そのあまりの万能さが、時として私たちの繊細な感情を少しだけ平坦に見せてしまうことがあるのかもしれません。心のどこかで、こんな風に感じてはいないでしょうか。
- 「とりあえず言っておけば、間違いない」という安心感
相手を傷つけることなく、その場を穏便に収めることができる。そんな無意識の安心感が、「すばらしい」という言葉を選ばせている部分は、たしかにあるのかもしれません。わかってはいても、つい便利な言葉に流されてしまうことって、ありますよね。 - 本当の気持ちを言語化するのが、追いつかない
心が大きく動いたときほど、ぴったりの言葉が見つからない。そんな経験はありませんか。感動の熱量に、言葉にする力が追いつかず、とりあえず一番大きな枠である「すばらしい」という言葉で表現してしまう。これも、よくあることだったりします。 - 語彙が少ないと、思われたくない
逆説的ですが、「何か言わなければ」という焦りが、かえってありきたりな言葉を選ばせてしまうこともあります。沈黙を恐れるあまり、最も手近にある無難な言葉に手を伸ばしてしまうのです。
言葉を選ぶという行為は、相手への心遣いそのものです。そして同時に、自分自身の心の中を覗き込む行為でもあります。「なぜ、自分は今、心が動いたのだろう?」とその理由を探ることで、言葉はもっと具体的で、温かいものになっていくのです。
「すばらしい」の言い換え【ビジネス・目上編】失礼にならない丁寧な表現
では、先ほどリストアップした言葉を、実際にどのように使っていけばいいのでしょうか。
まずは、多くの方が一番気になっているであろう、ビジネスシーンや目上の方との会話から見ていきましょう。
ここで意識したいのは、ただ単語を置き換えることではありません。「あなたの、どこに敬服しているのか」という尊敬の気持ちを、言葉に乗せて届けるような感覚です。
■ 相手の知識や見事な仕事ぶりに
相手の深い知見や、鮮やかな手腕に心から感心したとき。そんなときは、能力そのものへの敬意を示す言葉が、きっとあなたの気持ちを代弁してくれます。
「〇〇様のご見識の深さには、ただただ感服いたしました」
「部長の的確なご采配には、いつも勉強させていただいております」
「感服(かんふく)」は、深く感心して尊敬の念を抱くこと。「采配(さいはい)」は、人や物事をうまく動かす手腕を指します。このように、相手の何に心を動かされたのかを具体的に示す言葉を選ぶと、「この人はちゃんと見てくれている」という信頼につながりやすいですね。
一見すると少し硬い表現かもしれませんが、フォーマルな場では、こうした言葉選びが相手への誠意として受け取られる場面も多いものです。
■ 優れた提案や成果物に対して
取引先からの提案書や、部下が懸命に作成した資料。そういった具体的な「モノ」に対しては、その価値を認めていることが伝わる言葉を選んでみましょう。
「大変示唆に富むご提案、誠にありがとうございます」
「秀逸な分析レポートで、課題が明確になりました」
「示唆に富む(しさにとむ)」とは、大切なことをそれとなく教えてくれる、という意味合いです。相手の提案が、自分たちにとって価値あるヒントを与えてくれた、という感謝と尊敬が伝わる表現ですね。「秀逸(しゅういつ)」は、他より抜きん出て優れているさまを指し、相手の能力をストレートに称賛する際に役立ちます。
ただ「すばらしい資料」と言うのではなく、「説得力がある」「要点が明確で分かりやすい」のように、どこが良いのかを具体的に付け加えるだけで、相手の次への意欲にもつながるかもしれません。
「すばらしい」の言い換え【プライベート編】親しい相手に響く言葉選び
ビジネスシーンでの言葉選びも大切ですが、もう少し肩の力を抜きたい場面もありますよね。友人との会話や、心を揺さぶられたアートや音楽。そんなときには、もっと素直に、自分の感情の動きに焦点を当てた言葉を選んでみると、感動の熱量がまっすぐ相手に伝わりやすくなるかもしれません。
「すばらしい」という大きな枠から一歩だけ踏み出して、自分の心のどの部分が、どんなふうに動いたのか。少しだけ耳を澄ませてみるような感覚です。
■ 目の前の光景や作品に、心を奪われたとき
思わず息を止めて見入ってしまうような美しい景色や、圧倒的なパフォーマンス。そんな、理屈ではなく五感が直接揺さぶられるような感動を伝えたいときには、こんな言葉がしっくりくるかもしれません。
- 「息をのむような夕焼けだったね」
- 「まさに圧巻の演技だった…!」
- 「あのクライマックスの演奏には、鳥肌が立ったよ」
こうした表現は、頭で考えた評価というよりも、「体が先に反応してしまった」というような、抗えない感動の大きさを伝えてくれます。その場にいるかのような臨場感や、あなたの高揚した気持ちが、相手にも伝わりやすいのではないでしょうか。
■ 心にじわっと染み渡るような感動に
一方で、激しい衝撃ではなく、静かに、そして深く心が満たされるような感動もありますよね。優しい映画を観終えた後の帰り道や、大切な人からの温かい言葉に触れたとき。そんなじんわりとした温かさを表現するには、こんな言葉が似合います。
- 「なんだか心が洗われるような、優しい音色だったね」
- 「彼の最後のセリフが、妙に琴線に触れてしまって」
- 「何度も読み返したくなる、味わい深い物語でした」
「琴線(きんせん)に触れる」とは、心の奥深くにある、感動しやすい感情の糸をそっと弾かれるような感覚です。派手さはないけれど、いつまでも心に残る余韻。そんな種類の感動を、丁寧にすくい上げてくれる言葉だったりします。
「すばらしい」の言い換えが浮かばない…そんな時のための「一言プラス」術
ここまで色々な言い換えの言葉を見てきましたが、「そうは言っても、いざとなると気の利いた言葉がなかなか出てこない…」と感じる方もいるかもしれませんね。
でも、あまり心配しすぎなくても大丈夫ですよ。無理に慣れない言葉を使おうとして、かえって気持ちが伝わらなくなってしまうのは、少し寂しいですから。
実は、語彙力に自信がなくても、いつもの「すばらしい」という言葉を、ぐっと魅力的にする簡単なコツがあるんです。それは、「すばらしい」の後に、あなたがそう感じた具体的な理由や、素直な感想を「ほんの一言だけ」添えてあげること。
たとえば、こんな具合です。
「すばらしいプレゼンでした。特に、冒頭のデータ分析にはハッとさせられました。」
「すばらしい絵ですね! この青色の使い方が、個人的にすごく好きです。」
「すばらしい企画書ですね。〇〇という課題に対する解決策が、とても具体的で分かりやすかったです。」
いかがでしょうか。ただ「すばらしい」と伝えるだけよりも、ぐっと説得力が増して、あなたの気持ちが相手に届くような気がしませんか?
大切なのは、あなたが「どこに」「なぜ」心を動かされたのか、そのポイントを伝えること。難しい言葉を探す必要はまったくありません。「〇〇な部分が良かった」「〇〇という点に感心した」と付け加える。たったそれだけで、あなたの賞賛の言葉は、世界に一つだけの、温かいオリジナルなメッセージになるのです。
まとめ
言葉の引き出しが増えると、人とコミュニケーションをとるのが少し楽しくなるかもしれませんね。「すばらしい」という言葉も、もちろん素敵な言葉です。そこに、ほんの少しだけ彩りを加えるような気持ちで、新しい表現を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ここまで、すぐに使える言い換えの言葉から、場面別の使い分けまで見てきました。でも、最も大切なのは、たくさんの言葉を覚えることよりも、「相手の何に心を動かされたのか」を少しだけ意識してみることなのかもしれません。
完璧な言葉選びを目指すあまり、伝えることをためらってしまうのは、もったいないことです。あなたの「伝えたい」というその気持ち自体が、何より尊いのですから、どうか自信を持って言葉を紡いでみてください。
この記事が、あなたの言葉選びのヒントとなり、これからのコミュニケーションを、ほんの少しでも温かいものにするお手伝いができたなら、これほど嬉しいことはありません。
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